記録者

heavy-rain
2012年01月03日
468
僕は彼女にシャワーを使わずに来るように言っている。
おそらく彼女はその通りにしてくるだろう。
僕の知らない場所で、彼女は彼女の望みのものを手にいれてくる。
 
それがどの様なものなのか、話を聞いて知っている。僕が関わることのない世界。少なくとも今のところは。
それを思うとたまらない気分になる。
自分がしてやりたいというのではない。それを見ていたいのだ。
苦痛を受けるときの彼女の表情は。目は。カラダは。
あの場所は。どう動いて、どう反応して、どう濡れるのか。
 
それは叶わない。
その現場を見ることは叶わない。
 
だから僕は記録するのだ。
執行者にはなれないが、記録者にはなれる。
 
ドアのチャイムが鳴る。開けるとそこには彼女が一人でぽつんと立っている。
僕を見る顔はほとんど無表情で、生きている温度とゆうものが感じられない。
 
何の言葉を発する事もなく、彼女を部屋に入れる。
 
服をぬがす間も、彼女は立ち尽くしたままほとんど動かない。
何も話さないし、顔色ひとつ変えない。
どこを見ているのか分からない眼。息をしているのかどうかも分からない呼吸器。鼓動すら感じられない、白くて冷えたカラダ。
そのカラダを少し押すと、何の抵抗感も感じさせずに彼女はベッドに仰向けにたおれた。
 
 
記録を開始。
 
記録は僕の眼、口、鼻、手、肌によって施行される。
彼女のカラダのあらゆる場所を、それらを使って丹念に記録する。
カラダに残るいろいろな種類の傷痕。汗の痕跡。その傷にふれた時の反応。
感度は高まっているのか、それとも鈍麻しているのか。
 
その間中、彼女はほとんど動かない。視線は固定されているのだが、どこに焦点が合っているのかは見取れない。
胸部がかすかに上下していることで、呼吸が行われていることがやっと分かるくらいだ。
 
記録が際どい部分に及ぶごとに、傷跡が増えてくる。
 
彼女の足を押し広げる。そしてさらに傷だらけの陰唇を押し広げるとそこから白い粘性のある液体がどろりと流れ出た。
それを見て僕は相手の男を思った。
そいつは彼女のココにソレをぶちまける前に、どのくらいの時間をかけたのだろうか。
長い、長い時間
彼女が苦しみもだえ、絶叫を上げ、許しを乞う声を聞き流し、責め続けた。
こんな抜け殻になるまで。
 
その起こったことを、彼女のカラダから掘り起こして記録する。
彼女の粘膜と粘液から、それを記録する。
 
 
彼女はすぐに、苦痛を忘れる。だから僕が記録を残す。
苦痛を忘れる彼女は、またすぐにそれを求めることができる。
そしてまた、それを受けるとその痛みに恐怖し、後悔するのだ。
恐怖と後悔が彼女を彼女が求めている絶望に導く。繰り返し、繰り返し。
そしてまた、僕はそれを記録し続けるのだ。これからも。